島根県合唱連盟オフィシャルサイト

　コロナ禍のもと、3 月から今日まで学校に行くことができず、ましてや楽しい部活動もできず、ひたすらステイ・ホームに耐えてきた皆さんに、更に辛いお知らせをしなくてはなりません。それは、合唱コンクール全国大会の中止が決定されたことです。そのために中国大会、及び県大会も中止せざるを得なくなったことです。総体が中止され、吹奏楽コンクールが中止され、高校野球の甲子園大会が中止され、そして合唱コンクールの中止、何とか開催することはできないものかと随分苦慮されたのですが、 健康や命に代えることはできないと判断され、苦渋の決断がなされたのです。

　最終学年の皆さんにとっては集大成の大切な年にこのあまりにも非情な出来事、その無念さはいかばかりかと察するところです。また新入部員の皆さんにとっては、その期待や希望をもてあそばれた思いでいっぱいではないかと思います。そして多くの部員の皆さんは、このコロナウイルスに抗しきれないことにさぞ歯がゆさや憤りを感じているのではないかと思います。また、皆さんの歌声を何よりも楽しみにしている保護者の方々にとっても言い難き悔しさでいっぱいなのではないかと思って止みません。

　でも、嘆いてばかりではいけないと思います。ひょっとしたら、こんな状況だからこそ為すべきことがあるのかもしれません。今しかできないこともあるかもしれません。普段は気づかない何かに気づくかもしれません。それを見つけることこそ、今私たちがなすべきことなのかもしれません。

　17 世紀にロンドンでペストが大流行した折、ケンブリッジ大学で学んでいた若きニュートンが、ペスト禍を避け 18 ヶ月という長期にわたり故郷の田舎での休暇を強いられたまさにその期間に、「万有引力の法則」や「微分積分学」、そして「プリズム」の発見という、いわゆる「ニュートンの三大業績」を成し遂げたのです。いわば、ニュートンのこれらの歴史的功績はまさにペスト禍の賜物というわけなので す。「塞翁が馬」という言葉があります。また「禍転じて福となす」という言葉もあります。何が幸いするかわかりません。是非前向きにとらえて、これからを見据えていただきたいと思います。

　皆さんには前途洋々、輝かしい未来があります。明日があります。ここで味わった無念さを、この先中学で、高校で、大学で、社会で晴らしてほしいと思います。順風な中での穏やかな航海よりも、荒れ狂う嵐の海を乗り切った航海の方が経験値は高く喜びも大きいものです。是非このコロナ禍を将来のための糧にしていただき、さらに大きく成長していただきたいと思っています。こんな時こそ必要な歌声なのですが、その歌声を共に出来ないもどかしさは確かにあります。でも今はそれも明日のためのエネルギーの蓄積だと思っていただければと強く願っています。

　　　明日になれば太陽は昇る
　　　明日になれば絶対に
　　　太陽が昇ってくる
　　　だからただ明日のことを考える
　　　もやもやも悲しみもふきとんでしまうまで
（ミュージカル「アニー」より）

　これまでに積み重ね培ってきたものこそ、皆さんのなによりも大切な宝物です。その宝物と合唱人としての誇りを胸に、みんなで明日をみつめ、ともに明日に向かって歩んでいきましょう！

令和 2 年 5 月 25 日
島根県合唱連盟理事長　勝部 俊行